フォルクローレに限らずのことですが、1つの曲で使われる音階は、おおむね次の枠内に収まることが多いようです。
G A B C D E F G A B C D E中心となるオクターブ(赤色)に上下とも3音付加した計13音。
しかしもちろんこれより多い曲もあるでしょうし(Dm→Dのように転調する曲は自然増えます)、下の2音(G、A)を削った11音、少ないものだと『かえるの歌』の6音(C~A)のような曲もあります。
ただこの13音がそろっていれば、大体の曲は演奏可能ということになります。
これをフォルクローレの一般的な調性であるG調にあてはめてみます。
D E F# G A B C D E F# G A Bこれは
最低音レ、7+6=13管の一般的なサンポーニャの音階と一致します。つまり多くの楽曲を1つのサンポーニャで演奏できるように、こうした13音構造に作られたのだと推察します。
しかしながらG調では、平行調であるEm調にしばしば転調したり、またもちろんGのマイナー調であるEm調の楽曲もかなり多くあるので、この13音では足りないケースもでてきます(ちなみに『コンドルは飛んで行く』(シミレミファ#ソファ#ソラシー)を吹こうとするといきなり音がない)。
これはEm調の音域が、G調より下に2音ほどずれているためで、ドとシの音を補足しなくてはなりません。
そうして音階を作ってみると、
B C D E F# G A B C D E F# G A Bこの15音であれば、G調Em調ともにおおむねカバーすることができます。ほぼ2オクターブ分の音域です(楽器として成立する音域といえるのかもしれません)。
これは最近主流となりつつある
最低音シ、8+7=15管のサンポーニャの音階に相当します。
したがって15管のサンポーニャを持っていればベスト!
…でもフォルクローレでは、G(Em)調のみならず、C(Am)調の曲もかなり多く演奏されるので(
調(キー)についての記事参照)、しばしばもう少し下の音が必要になってきます。
具体的にはC調で+2管(ラ、ソ)、Am調ではさらに+2管(ファ、ミ)なのですが、ソまでは低音部で補い、Am調の音域への対応は高音部に付加しているようです。
そして忘れてはならない
ファ♮への対応も必須…。
G(Em)調以外のキーに対応しているサンポーニャには次のものがあります。
最低音ソ、9+10=19管 … C(Am)調をほぼカバー
最低音ソ、10+11=21管 … 加えてD(Bm)調もカバー
ただしこれら(のキー)は、異なる半音を要するため、ふつうクロマティック管も配した3列タイプで売られているようです。
ところで、サンポーニャでやっかいな異なるキーへの対応は、
①クロマティックスケールのものを手に入れる(2列タイプのものもある)
②必要な音の管だけオプションで付ける(ファ♮やド#など)
③CやDのスケールで作られたものを手に入れる(あるのかな?)、もしくは作る!
個人的におすすめは、大は小を兼ねるで10+11+12の3列クロマティックですが、手軽なほうがいいという方は8+7もいいと思いますし、やっぱりこちらが基本かな。
ちなみにファ♮の音は、ファ#の管を水平方向に傾けて吹くと出せます(低いほうのだときびしいのですが…)。プロの奏者やYAMAのRyotaなどはやってますね、いとも簡単そうに…。
以上、少々サンポーニャに偏ってしまいましたが音域についてでした。
それぞれの楽器に得意としている音域やキーがあります。これを統一すれば演奏ももっと容易になるのかもしれませんが、逆にさまざまな調性や音階の楽器があることで、お互いの弱点をカバーしてより深みと広がりのある演奏を可能にしているとも言えます。
D管ケナーチョは音域、音質の面で見事にG管ケーナをサポートしていますし、サンポーニャもマルタ、サンカ、トヨと音域や役割を分担させることで、合奏による楽しさを引き出しているのかもしれません。
ひとつですべてとならず、多様なものが混在してこそのおもしろさだと思います。